遺言書
遺言の効力
遺言と聞くと何か縁起が悪いだとか、我が家に限って相続で揉めることなんて絶対にないと思われる方の方が多いでしょう。そもそも相続が発生したときに実際に遺言書が残されていたというケースは、全体の1割ぐらいなので、遺言書ブームと言われてはおりますが、絶対に遺言を書かなければならないということではありません。
しかし、実際に亡くなられた方が遺言書を残していた場合は、その方の意思が込められた何らかのメッセージになります。そもそも遺言の効力には次の2つがあります。
(1)しばしば遺産の分割を巡って骨肉の争いが起きていますが、遺言によりこのような争いを未然に防ぐことができる。
(2)遺言により、家業の実態や各相続人の生活状況に応じて、法定相続分を修正して財産を分与することができる。
遺言が特に必要とされるケース
遺言を書かなければならないという義務はありませんが、家族形態や生活状況によっては、遺言を残した方が良いケースもあります。特に相続が発生した場合に、誰が相続人になるか、生前誰の世話になったかによっては遺言を残す必要も出てくるでしょう。
下記は特に代表的な例としてあげさせていただきます。
(1)夫婦間に子どもや直系尊属(父母・祖父母)がいない場合
例えば、子どもと直系尊属がいない場合(子どもはいたが、親より先に亡くなっていて孫がいる場合は除く)に夫が死亡すると、妻が全財産の4分の3、(夫の)兄弟姉妹が4分の1を相続することになりますが、兄弟姉妹には遺留分がないので、生前に夫が妻に全財産を残す遺言書を作成しておけば、妻が確実に全財産を相続することができます。
ここでいう遺留分とは、例え遺言書があったために法定相続分の財産がもらえなかったとしても、最低限財産を貰える権利(詳しい計算は省略いたします)があるということです。兄弟姉妹には遺留分がないため、妻に兄弟姉妹との財産分けで負担をかけさせたくないという思いがあり、相続分がこのようになるのを初めて知ったという方は遺言書を残しておいた方が良いでしょう。
(2)相続人に認知症の症状がある方がいる場合
被相続人が亡くなって相続が発生した場合、原則として相続人同士で遺産分割協議を行わなければなりません。しかし、認知症の症状がある相続人がいる場合、そもそも協議についての内容が理解できないこともあり、本人にとっては不利な内容の協議がまとまってしまう可能性があります。そのようなときには成年後見制度を利用する必要が出てくるため、協議が終了するまでに時間がかかることもあります。
(3)自分を介護してくれている子どもとそうでない子どもがいる場合
高齢者を介護するということは、大変な労力と精神力を要しますが、自分の死後、介護をしてくれた者としない者との間で、遺産分割に争いが生じることがよくあります。そこで、介護してくれた者の貢献度を考慮に入れた遺言をすべき必要も出てくるでしょう。
(4)子どもの配偶者に財産を分与したい場合
子どもの配偶者は相続人ではないので、例えば長男の嫁に老後の世話になっていたとしても、嫁には相続権はありません。そこで、世話になっている長男の嫁に財産を分与するには、遺言により、相応分の財産を嫁に遺贈(遺言によって財産を譲渡すること)すべき必要があるでしょう。
(5)先妻の子どもと後妻の子どもがいる場合
先妻の子どもと後妻の子どもは、いずれも夫の相続人となりますが、これらの子どもの間では遺産分割で争いが生じやすいので、遺言によりきちんと財産を分与しておくと争いの予防となります。
(6)いわゆる熟年離婚の場合
例えば、60歳代の夫が妻と離婚後に同年代の女性と再婚した場合、再婚した妻(後妻)に2分の1の相続権が発生しますが、後妻と先妻の子どもとの間では遺産分割で争いが生じやすいので、遺言によりきちんと財産を分与しておくと争いの予防となります。
(7)生涯独身または配偶者とは死別していて兄弟姉妹だけが相続人の場合
現在では、生涯独身の方や配偶者が死別していて子どもがいないというケースがよくあります。この場合、第一順位の相続人は直系尊属(父母・祖父母)となりますが、日本の平均寿命を全うした場合を考えると、両親は既に他界されていることが多いでしょう。そうなると、第二順位の相続人は兄弟姉妹になります。この場合のケースでは相続人が高齢であったり、疎遠な関係になっていることが多いのが現状です。
(1)で解説しましたが、兄弟姉妹が相続人になる場合は遺留分という権利がないので、複数の兄弟姉妹間で一人だけにお世話になっていたり、甥や姪に財産を残してあげたい場合は、遺言書を残しておけば争いなく特定の方に財産を残すことが可能になります。
(8)相続人が全くいない場合
相続人が全くいない場合には、遺産は原則として国庫に帰属します。したがって、平素世話になっている方や法人に財産を分与するには、遺言によりこれらの個人や法人に財産を遺贈する必要があります。
遺言の種類
(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が、全文、日付及び氏名を自書し、押印をすることによってできあがります。全文、日付及び氏名の全部を自分で書く必要があり、ワープロ、コンピューターで作成したものは無効です。押印は実印でも、認印でもかまいません。
このように、自筆証書遺言は、自分1人で作成できるので簡便ですが、紛失したり、変造されたりするおそれがある上に、家庭裁判所による検認手続きを必要とします。
※2019年1月13日より、財産目録に関して自書を必ず求められることがなくなりました。したがって、パソコンで財産目録を作成することが可能になり、遺言者の負担は軽くなりますが、遺言者の氏名を署名・押印することは必要になります。また、2020年7月10日から開始された、法務局における自筆証書遺言保管制度を利用した場合、家庭裁判所による検認手続きは不要になりました。
詳しくは下記のファイルをご覧下さい。
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(2)公正証書遺言
公正証書遺言は、法務大臣が任命、監督する公証人が作成するもので、遺言者が成年に達した証人2人の立会いの下、公証人に遺言の趣旨を口述し、公証人がそれを筆記し、公証人が遺言書及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、遺言者及び証人が筆記が正確であることを確認して署名、押印し、最後に公証人が署名、押印することによって出来上がります。
公正証書遺言は、公証人や専門家への作成費用が掛かりますが、原本を公証人が保管しますので、紛失したり、変造されるおそれがない上、自筆証書遺言とは違い家庭裁判所による検認手続が不要となるためおすすめしたい遺言です。
検認とは?
遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、相続開始(遺言者の死亡)を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して検認の請求をしなければなりません。(民法1004条1項)提出先は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所です。
なお、遺言者の死亡後、封印のある遺言書の保管者やこれを発見した相続人は、勝手にこれを開封することなく、家庭裁判所に検認の請求をする必要があります。この封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いの上でなければ開封することができません。(民法1004条3項)これに反して開封すると、5万円以下の過料に処せられます。(民法1005条)
※検認の性質
検認は、家庭裁判所が、遺言執行の前に遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の方式に関する事実の調査をなし、その現状を明確にして保存し、もって、後日における偽造・変造・毀滅を防ぐ一種の検証手続あるいは証拠保全手続です。したがって、遺言の内容の真否を審査し、その効力の有無を確定するものではありません。
遺言業務の流れ
まずはお電話でご連絡下さい。日程調整をさせていただきます。
2.無料面談の実施(初回のみ)
・ご相談者様がどのような遺言を希望されているか、ご自身の遺産を誰に、どのような方法でどのぐらい遺言で残していきたいのか、現在の状況と将来見込まれる状況をヒアリングした上でご提案していきます。
・しっかりとヒアリングをした上で、必要書類、業務完了までの流れを説明させていただき、御見積書をご提示します。
3.業務委任契約の締結
・ご依頼いただけましたら書面にて業務委任契約を締結いたします。
4.遺言方式の選択
・自筆証書遺言、公正証書遺言の中から、ご希望を実現する上で最も適した方式をお選びいただきます。
5.必要書類の収集
・遺言書作成前の段階で必要な書類(戸籍謄本や不動産登記簿謄本、固定資産税評価証明書等)を収集し、相続関係説明図や財産目録を作成します。
6.遺言書の文案作成
・お客様からヒアリングした内容とこちらで収集した資料等をもとに遺言書の文案を作成していきます。
7.公証役場へ(公正証書遺言の場合)
・遺言書の文案を公証人に届けます。綿密な打合せを行い、法律上の問題点などを検討した上で、公正証書遺言を作成していきます。
8.お客様に遺言書の原案を確認していただく
・お客様に公正証書遺言の原案を確認していただき、ご納得いただけましたら公証役場でのご予約をこちらで取ります。
9.指定した日時に、お客様と公証役場で待ち合わせ
・当日は、実印をお持ちになって公証役場にお越し下さい。その際には公正証書の原本に署名と押印(実印)を行いますので、実印はくれぐれも忘れないようにお願いします。
・証人2人については、私と、もう一人は他の行政書士を手配いたしますので、お客様ご自身で証人をお探しする必要はございません。
・公証役場へ支払う手数料は、公証役場で当日にお支払い願います。手数料の金額は8の確認が終了した後、お客様にお伝えします。
※なお、病院や施設への入所で公証役場へ出向けない場合でも、別途手当等が必要になりますが、公証人の出張もしていただけますのでご安心下さい。
10.公正証書遺言の完成と報酬の精算
・遺言書の原本に署名・押印をして公証役場への手数料を支払い、公正証書遺言の正本と謄本を受取ります。紛失されないよう大切に保管して下さい。
・当日は当事務所の報酬の精算をお願いいたします。最終的な金額は8の確認が終了した後、お客様にご案内します。
・報酬の精算が終わりましたら、事前にお客様にお預かりした書類、こちらで収集した書類をお客様に返却します。
遺言書作成サポート報酬額
①基本調査手数料…33,000円
②自筆証書遺言起案作成手数料…44,000円
③公正証書遺言起案作成手数料…55,000円
④公正証書遺言証人立会手数料…11,000円
⑤公証役場支払い手数料…財産額等により異なる
⑥公的証明書費用、郵送費…実費
※留意事項
1 上記①における基本調査手数料とは、戸籍等の収集、不動産関係の公的書類収集、相続関係説明図の作成等、遺言書起案の作成前段階の調査を行います。
2 上記③における公正証書遺言起案作成手数料とは、行政書士がお客様とのヒアリングを行い、起案の作成から公証人との綿密なやりとり、行政書士から遺言者様に公証役場で完成する原案と公証役場へ支払う手数料等を確認していただきます。
3 上記④における公正証書遺言証人立会手数料とは、公正証書遺言では証人2人の立会いが必要になる関係で、1人は当職が行いますが、もう1人はこちらが指名する行政書士をご紹介させていただきます。なお、当職の証人立会手数料は③の金額に含まれております。
4 上記⑤における公証役場支払い手数料は、財産の額や何人の方にどれぐらいの額を相続させるか、公証人が出張するか等の理由で手数料が異なってきます。平均的に3万円~5万円の方が多いです。